渡された羊皮紙の僕のお名前を書いて渡すと、受け取ったルルモアさんはにっこり笑ってこう言ったんだ。
「はい、これですべての手続きが終了しました。これによりキルヴィさんたちはルディーン君の所属になります」
イーノックカウの居住権ってのは取ったし、お家も買ったっでしょ?
だから早速お姉さんたちの手続きをしてもらったんだ。
でね、そのお姉さんたちなんだけど、借金奴隷ってのとはちょっと違うみたい。
「所属? 借金奴隷ではないのですか?」
「はい。立場的にはほとんど変わらないのですが、冒険者ギルドによる救済処置で借金をした相手であるルディーン君の元に預けられているという立場になります」
所属って言われてたキルヴィさんが、なんか違うの? って聞いたんだ。
そしたらルルモアさんが、借金奴隷になっちゃうといろいろと不便な事があるから、その一部を回避するために言い方が少しだけ変わっているんだよって教えてくれたんだよね。
その中でもお姉さんたちが借金奴隷になっちゃったら一番困るのが、買った人の許可が無いとあらかじめ決められたとこから出てくことができないことなんだって。
「借金奴隷の場合、その多くが過酷な状況下に置かれることになります。ですから逃げ出そうとする人も多いんですよ」
「ああ、なるほど。だから他の場所への移動が制限されるのですね」
例えばイーノックカウの中で働いてねって言われたとするでしょ?
そしたら借金奴隷になった人は街から出てこうとしても、門のところで捕まって買った人の所に連れてかれちゃうそうなんだよ。
「この場合は借金奴隷から準犯罪奴隷になってしまうので、返済期間が過ぎた後、一定期間強制労働になってしまいます。でもキルヴィさんたちの場合は、冒険者ですもの。この規約は適用されたら困ってしまいますよね?」
「確かにそうですね。ルディーン君の館に住まわせてもらうのだから、私たちの配置場所はイーノックカウという事になります。でも働く場所はその外にある森がメインですもの」
「ええ。その上ルディーン君はこの街に住んでいるわけではないのですから、許可を取る事もできません。これでは働く事さえできないですからね」
この場合、もし僕がいっつもこのイーノックカウに居たら森に行くたんびに行っていいよって言えばいいんだけど、いつもはグランリルの村にいるでしょ?
だからお姉さんたちは冒険者のお仕事ができなくなっちゃうんだ。
「そしてないより困るのが、借金奴隷に限らず、すべての奴隷はいつも見える場所に奴隷であることを示すものを身につけなければならなくなるのです」
さっき、もし決められたとこから出てったら捕まっちゃうって言ってたでしょ?
でもその人が奴隷かどうかなんて普通は解んないよね?
だから奴隷になった人は、首輪なんかの自分では取れない印をつけなくちゃダメなんだって。
「普通は奴隷を単独で森に行かせるなんて事はあり得ないもの。見かけた人はまず間違いなく脱走奴隷と思うわ」
「なるほど。脱走奴隷を捕まえれば報奨金が出るから、森で他の冒険者にあったらまず間違いなくトラブルになるわね」
「そう言う事。でも所属と言う立場は奴隷のように印をつける必要が無いから、そのような事態を避けられるってわけ」
その所属って言うのは冒険者ギルドの救済処置だから、奴隷の制度の中で冒険者として働くのに困るような事だけをなくしちゃったものなんだって。
だからほとんど借金奴隷とおんなじなんだけど、違うって解るように名前を変えてるんだってさ。
「でも、実質は借金奴隷であるという事は忘れないようにね。それを勘違いしていると何かの拍子に規約違反を起こしてしまうかもしれないし、もしそうなった場合最悪犯罪奴隷になってしまう可能性だってあるわ」
「はい。しっかり肝に銘じておきます」
でもね、名前や冒険者をするのに困らないようにはなってるけど、所属ってのは借金奴隷とおんなじだから気を付けてねってルルモアさんは言うんだ。
だってもし犯罪奴隷になっちゃったら大変だもん。
それが解ってるから、お姉さんたちも解ってるよって頷いたんだ。
「それじゃあ、これからお世話になるという事で、改めて自己紹介をさせてもらうわね」
「は〜い!」
パチパチパチ。
全部終わったって事で、お姉さんたちは僕やロルフさんたちの前で自己紹介をする事に。
だから僕、おててを叩いておっきな声でどうぞっておお返事したんだ。
「それではまず私から。私の名前はニコラ・キルヴィと言います。17歳で他の二人より一つ年上でこの街に出てきたのも1年早かったという理由でリーダーを任されていました」
キルヴィさんはね、女の人の中ではどっちかって言うと背が高い方で、髪型は型辺りまで伸ばしたストレートの赤毛。
お顔はちょっとつり目でぱっと見怖そうなんだけど、優しそうな笑顔をするお姉さんだ。
「ルディーン君は今まで私の事をキルヴィさんと呼んでくれていたけど、ご主人様になったのだからこれからはニコラって呼んでもらえると嬉しいわ」
「うん、解ったよ。ニコラさん」
僕がそうお返事するとね、ニコラさんは自分は奴隷なんだからニコラって呼び捨てでいいよって言ったんだよね。
でも僕、お姉さんたちを呼び捨てになんてできないから、最後にはみんなさん付けで呼ぶことになった。
「次は私ね。ユリアナ・ハットネンって言います。歳は16歳です」
ユリアナさんはね、肩甲骨くらいまで伸ばしたきれいな金髪を後ろで束ねた美人さんなんだ。
でもね、ニコラさんが言うには見た目は美人さんなのに落ち着きが無くって、いっつも動き回ってる活発なタイプらしいんだよね。
それに何かあるといっつもおっきなお口をあけて笑うもんだから、知ってる人はみんな、静かに座ってればどこかのお嬢様に見えるのにって言われてるんだって。
「いわゆる、残念美人ってやつね」
「ニコラ、それはちょっとひどいんじゃない?」
そう言ってユリアナさんはニコラさんをキッって睨んだんだけど、そのすぐ後に二人して大笑いしたとこ見ると、本当に仲良しさんなんだろうね。
「最後は私ですね。アマリア・エクルースと言います。ユリアナと同い年で、一緒に村から出てきました。よろしくお願いします」
アマリアさんはね、ニコラさんとは逆で150センチちょっとくらいしかない小さめなお姉さんなんだ。
それに目がおっきくてちょっとたれ目なもんだから、見た目より幼く見えるんだよ。
髪の毛は明るい茶色で、長めの髪を一つに束ねたサイドテールにしてるんだけど、その髪型もアマリアさんを幼く見せてる理由の一つなのかも?
ただ、カッコいいニコラsんや美人さんのユリアナさんと違って、アマリアさんはその印象のおかげで一番話しやすい感じがするお姉さんなんだ。
「この子、顔はこんななのに、私たちの中で一番胸が大きいのよね」
「そうそう。背は小さいのに胸が大きくから、太って見えるって悩んでるのよ」
「もう! 二人とも、いきなり何言い出すのよ!」
ニコラさんたちに変なこと言われたもんだから、アマリアさんは両手を上げて怒ってるんだよ?
でも二人より小っちゃいもんだから、僕、キャリーナ姉ちゃんがヒルダ姉ちゃんに怒ってるとこを思い出して笑っちゃったんだ。
「もう、ルディーン君まで」
「いいじゃない、アマリア。新しいご主人様に良い印象を持ってもらえたって事なんだから」
「それはそうなんだけど……」
そう言いながらも、アマリアさんはちょっと不満顔。
そんなアマリアさんを見て、ユリアナさんはおっきなお口を開けて大笑いしたもんだから、
「なるほど。残念美人とは上手く言ったものじゃな」
今度はロルフさんが、ちっちゃな声でニコニコしながらそう言ったんだ。
これから仲間になる3人娘の紹介回でした。
この設定は初登場した時から決まっていたものだったのですが、なかなか発表するタイミングが無かったんですよね。
でもまぁ早いうちに出してしまっていたら、もしかすると誰が誰だかよく解らなくなってしまったかもしれません。
なにせ今までは一緒に行動する人が多すぎましたからね。
さて、とりあえずお姉さんたちのお話はここでひと段落、次回からはルディーン君たちがイーノックカウに来た本来の目的のお話に戻ります。
……横道に長くそれ過ぎてもう忘れられているかもしれませんがw